初めての冷却CCDカメラ

これから冷却CCDカメラを始める方へ基本的知識と正しい使い方をご紹介いたします。 
冷却CCDカメラで得られる画像データは生データであるためそのままでは美しい映像には見えません。 人の眼に 合った処理をすることではじめてウェブサイトやプリントで他人に見せることができます。 デジカメはこの人の眼に合った処理が 映像エンジンの中に入っており撮影してすぐにきれいな映像が見えますが、冷却カメラではこの映像処理を 自分で行うことでデジカメ以上の高いポテンシャルを引き出すことができます。 簡単に言いますと画像処理とは65536諧調に映した映像を 256諧調にうまく収める作業の一言に尽き、そのためのいくつかの工程を1つ1つご紹介いたします。

■CCDセンサ選び
まずはCCDセンサを選ぶところから始めます。 スタータとしてお勧め機種の1つがKAF-8300を搭載したFLI社ML8300です。 画素数は A4プリントするに必要最低限の要素をもっており、フォーマットサイズも大きすぎず小さすぎずでとても使いやすいサイズです。  将来ML11002/16000/29050/16803/50100といったラージフォーマットをご購入なさってもセカンドカメラとして十分楽しめます。  フォーマットサイズが大きくなるほど画像処理の難易度があがりますので中間をとってAPSサイズのML16200なども賢い選択の1つです。 もちろん最初からラージフォーマットを選択するのも良いでしょう。

左:FLI ML16803 CCDセンサ  右:同社 ML8300 CCDセンサ

CCDセンサにはモノクロとカラーの2種類がございますが、多くの場合モノクロの冷却CCDが天体写真向きとして選ばれます。 理由はカラーCCDよりも感度が高いこととフィルタの自由度が 高いことが挙げられます。 カラーCCDは機材構成がシンプルにはなりますが、画像処理が複雑になるため天体写真が目的の場合には モノクロカメラをお勧めしております。 

■フルフレーム型CCDとインターライン型CCD
一般にフルフレーム型CCDはインターライン型CCDよりもやや感度が高く天体撮影向きのCCDと言えます。 デメリットとしては 宇宙線ノイズが映りやすい、メカニカルシャッターを必要とする、ダウンロード時間がやや遅いなどが挙げられますが、 大きな欠点ではありません。 

■画像処理の流れ
撮影した画像を最終画像に仕上げるには、ダーク・フラット処理、カラー合成、トーンカーブ変換の3段階が必要になります。  それぞれ見ていきましょう。


■ダーク処理
長時間露光すると画面内にダークノイズが出現します。 このノイズは冷却温度と露出時間に正確に依存したノイズのため、 同じ条件下で露光しないダークフレームを撮影し天体写真の映像が引き算をすると綺麗に除去することができます。

左:生データ  右:ダーク減算処理後の画像  (クリックで拡大)

■フラット処理
CCDカメラの付近にはフィルタやウィンドウがあり、これらの上に付着したごみがCCD上に円形の影や望遠鏡の周辺減光が映像に 掛け合わせあっています。 均一で白い被写体を撮影した画像をフラットフレームと呼び、このフレームで天体画像を割り算するとごみの影や周辺減光は綺麗に除去できます。 
光害のある空や周辺減光が大きい望遠鏡では重要な処理工程になります。

左:生データ  右:フラット処理後の画像  (クリックで拡大)

■RGB合成
RGBの3色で撮影した画像をソフトウェアで合成すると、綺麗なカラー映像ができあがります。 実践してみるとカラー画像の仕組みの理解が一段と高まります。

左:生データ  右:フラット処理後の画像  (クリックで拡大)

■トーンカーブ
人間の眼は対数的に光の強弱を感じているため、直線的に分布された強度をトーンカーブ変換して 見やすいように変えます。

左:生データ  中:表示範囲を手動で調整  右:対数変換カーブで調整  (クリックで拡大)

サードパーティソフトウェアのAstroart6にはこれらの処理を行ってくれる機能が備わっております。
また、ここまでの工程であれば情報の信憑性の観点から、新聞やテレビなどの公共の場での映像発表を行っても問題ない処理範囲です。
天文誌などで入選するにはさらに複雑な処理をする例が多いですが、ここまでの処理でも十分綺麗な映像になります。 ギャラリーに掲載してあります弊社撮影のサンプル画像はすべて以上の処理にとどめてあります。

リンク
Astroart6
FLI 冷却CCDカメラ MicroLineシリーズ

参考資料
豪州リモート観測所AROギャラリー
サンプルギャラリー

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