HOME > SN比をあげるためには 


   CCDセンサが登場してから銀塩フィルムに比べ感度が10倍以上になったと言われております。 銀塩フィルムの 量子効率が3%程度だったのに対し、CCDセンサは60-90%と高いのが理由です。 その分露出時間が短縮できたのですが 一方でより暗い天体まで見えるようになったので露出時間を短縮するどころかさらに長い時間をかけて 撮影するようになりました。
映像を評価するはS/N(エスエヌ比)で考える必要があり、S(シグナル)を増やすかN(ノイズ)を減らすかの手段を取ります。  では具体的にどのようにすればS/Nを上げるかご紹介いたします。

●シグナルを上げる方法
・口径を大きくする
・露出時間を延ばす
・CCDの感度をあげる
・フィルタの透過幅を広げる
・光学系の透過率を上げる
・F値を小さくする
・撮影枚数を稼ぐ

などが挙げられます。 1つずつ説明していきましょう。
望遠鏡の口径を大きくすればその分光を多く集めることができ、つまりはシグナルが増大します。 露出時間も口径と同様 時間を延ばせばその分シグナルが増大します。 裏面CCDを使えば量子効率が90%以上になり、表面照射型の2倍の感度が 得られますが価格は一般に3倍以上かかります。 ただし口径40cmの望遠鏡を2倍にする費用に比べると安くなるため 大口径の望遠鏡を使う天文台やハイアマチュアでは裏面照射型CCDを使う例が常套手段となります。
安価にシグナルをあげる方法としてはフィルタの透過幅をあげることがあります。 カラーフィルタよりもクリアフィルタのほうが 簡単に暗い映像が出てくることはご経験どおりだと思います。 ワイドRGBは可視域と等価な色情報得られる赤外まで利用した 優秀なカラーフィルタです。
F値の小さい(Fの明るい)望遠鏡を使うと星雲など広がりのある天体にはシグナルをあげるのに有効な手段ですが、恒星のような 点像の場合にはそのようには行きません。 測光などを目的とした場合には適したCCDとF値をお選びください。 最後に、 撮影枚数を増やし後で画像処理でコンポジットすることで露出時間を延ばすことと同等の効果が得られることもお忘れなく。

●ノイズを減らす方法
・CCDを冷却する(ダークカレントを小さくする)
・光害の無いところで撮影する(スカイノイズを小さくする)
・読み出しノイズを小さくする
・ショットノイズは減らせない

主なノイズはショットノイズ、ダークノイズ、スカイノイズ、読み出しノイズで、これらをすべてあわせたのがノイズをされます。  計算方法はすべてのノイズを2乗和しその平方根を取ったものがノイズになります。 従いましてノイズの割合はそれぞれの 2乗に比例しますので大きなノイズほど抑える努力をするべきです。
実際の撮影においてもっとも大きなノイズはショットノイズです。 ショットノイズはシグナルの平方根であるため減らすことができません。  次に大きなノイズになるのがスカイノイズです。 日本のどこで撮影しても背景が数千カウントになることは当たり前です。 つまり スカイノイズは数十カウントになります。 ここを極力抑えられればかなり良い映像が得られやすくなります。 ダークノイズは ダーク減算したあとの残存量を示しており、通常冷却してあればかなり良いレベルで小さくなります。 読み出しノイズは良いカメラですと 5電子、悪くても20電子程度で特定の撮影方法で無い限りはあまり影響しないノイズです。

●具体的計算例
1カウント=1電子にセットされたカメラがあったとし、ある天体像を撮影したとき星雲強度が1万、背景レベルが5千、読み出しノイズが 15電子、ダークノイズが20電子だったとします。 このとき星雲部分のS/Nの計算は次の通りです。

シグナルの計算
S=星雲レベル−背景レベル
 =10000-5000
 =5000

ノイズの計算
N=√(100×100+70.7×70.7+15×15+20×20
 =√15625
 =125

S/N=シグナル/ノイズ
 =5000/125
 =40

となります。 もし読み出しノイズがゼロの理想的なカメラがあったとしてもS/Nは40.3とほとんど変わりませんが、 無光害地で撮影した場合にはS/Nは97となり2倍以上の滑らかな映像が得られます。 背景レベルの 影響が大きいことがわかります。

●読み出しノイズが重要となる観測例
このように一般的な撮影においては読み出しノイズはあまり影響してきませんが、読み出しノイズが重要となる 観測ケースがございます。 それは背景がほとんどゼロとなりシグナルが微弱なケースです。 具体的には 次のようなケースになります。

・露出数秒程度の短時間露光による測光
・分光のように絶対値を測定する場合
・超ナローバンド撮影による場合

ただし恒星のような点像の場合には以上のことが必ずしも当てはまらないこともございますので詳しくは当社にご相談ください。 お客様の 観測に適した設定をご提案させていただいております。

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