スタンドアローン型リモート観測所

天体観測の分野では近年リモート観測所が流行りつつあります。 長時間かけて山奥へ行き、重い機材を組み立て、寒い中朝まで 天体撮影をするのはとても体力のいる仕事ですが、リモート観測なら自宅から天体望遠鏡を操作し 簡単に写真ができる画期的なシステムです。 ところが、実際にはハードルがいくつもあり、安定して無人で 観測できているところは多くありません。

ハードルの1つがライフラインです。 リモート観測に必要な電力やネットワークを構築するには、観測所を 建設するのと同じくらいのコストと時間が掛かるだけでなく、場所によっては電線が引けず建設できないケースもあります。 考えてみれば 電線が引けるような土地で暗い空やシーイングの良い場所などほとんどなく、実のところ大きな矛盾を 抱えています。

そこで、山間部の奥地でもリモート観測実現するために、当社では省電力をコンセプトにしたリモート観測所の 実証実験を行っております。 電力にはソーラ発電を使うのはもちろんのこと、観測所の屋根に設置できる程度の小規模の パネルを使います。 「これだけで本当にすべての機器の電力を賄えるのか?」と大きな疑問を抱きますが、 天体観測の場合、消費電力のほとんどが各機器の待機電力になりますので、使っていない機器はできる限り 電源をオフにしておくことが電力収支のカギとなります。

各機器の電源を制御するコントローラ自体も市販品の場合無視できない程度の電力消費となるので、 PCのバスパワーで制御できるリレー回路を使うことにより極力消費電力を抑えることができます。 そのほか パソコン自体も1日の多くは電源をオフにし、できる限りバッテリーの充電量を高く保つよう電源管理を 行っております。 天体観測所に限らず野生観察などにも応用できます。

  実施例

場所:山梨県 富士見山荘天体観測所
標高:1709m
観測室:2.6mスライディングルーフ(鉄骨)
赤道儀:三鷹光器製 GN-30型(Sitech ServoII)
望遠鏡:Celestron C11 HyperStar、当社製25pF9 RC、SharpStar 15pF2.8アストログラフ
カメラ:キヤノン EOS 6D MarkII(赤外改造)、キヤノン EOS 6D MarkII(ノーマル)
全天カメラ:キヤノン EOS Kiss X7 + Nikon 10.5oF2.8魚眼レンズ (高精細ポリカドーム採用)
パソコン:DELL Latitude 2台
ネットワーク:モバイルWiFi
ソーラパネル出力:175W
バッテリー容量:600WH

ソーラパネル設置










ローラ取り付け












ベガ(C11+Hyperstar、露出30秒)










人工衛星(150oF2.8 露出10秒×明加算 15分間)










冬の空の様子










M51(露出時間60秒×10枚)










M101(露出時間60秒×12枚)










全天カメラ映像